ある日ネカフェで一人ダーツの練習をしていたら、シャフトがバレルの中で折れた。
シャフトとは、ダーツの本体の金属部分(バレルという)と羽根(フライトという)をつなぐ棒の部分で、プラスチック製の部品だ。
当時わたしはダーツを始めて一か月とかの超絶ビギナーで、こうなったときに折れたシャフトをバレルから取り出すシャフトリムーバーなるグッズを持っていなかったため、練習終了後にダーツショップに買いに行くことにした。

ダーツショップでシャフトリムーバーと新しいシャフトを購入し、店員のお兄さんに使い方を教わった。
お兄さんは快く使い方を教えてくれた。

その日ダーツショップでは、購入金額に応じて(だったかな?)、プロダーツプレイヤーのステッカーをプレゼントするキャンペーンを行っていた。
封筒に入れられてくじ引きのようなスタイルでのプレゼントだったため、どのプレイヤーのステッカーが当たるかはわからなかった。
店員さんはわたしに見本を見せながら、「知っているプロはいる?」と聞いてきた。
わたしは正直に、
「実はダーツを始めたばかりで、プロの方は近所のダーツバーにいらっしゃる●●さんくらいしか存じ上げないのです。勉強不足でごめんなさい」
と言った。

(●●さんは、ダーツライブというダーツの機械で投げた際に成績を記録するカードをわたしが初めて購入した場所にいたプロの方。
その時の同行者いわく「投げるフォームがとてもきれいで実力も高い」と興奮気味に言っていた方で、その辺のことはわたしはわからないが優しく対応してくれたその方にわたしはとても好印象を抱いていた。
店員さんや後述のおじさんがが知っていたのでおそらく有名人なのだと思うが恐れ多い。)

わたしのプロ選手知らない発言を受けて、近くにいたおじさん(お客さん)が、ポロっとこう言った。
「それでいい、ダーツプロなんて知らないほうがいい。あの世界を知るとダーツがやりにくくなるよ」
店員のお兄さんは苦笑いをしていた。

わたしはプロを目指すようなプレイヤーではない。
家にダーツの的はないし、バレルは貰い物のおさがりだし、投げるのも週に1回が平均というところ。
今後その意識が変わらないとも限らないが、現状は親しい人と投げてわいわいする程度で楽しい俗にいうエンジョイ勢で、ダーツ始めて3か月過ぎた今でもライブRt.3未満のド下手くそだ。
いまだに顔と名前が一致するプロなんて●●さんと、先日ハードダーツの世界大会で優勝した方くらいしかいない。

そんな自分にとってプロの選手というのは実力の次元が違うすごい人たちで、みんなのあこがれのようなものだと思っていた。

あのおじさんの発言と、●●さんにお会いした時の同行者の「実力が高い」発言(これは実力の足りていないプロがいるということらしいがその辺のことはわたしはよくわからない)、Twitterでは定期的にプロ周りで炎上しているらしいということ(その辺もあまりよくわからない)、初心者でしかもその世界にいる人たちを知らない自分としてはちょっと気になった。

まあでもどの世界にも変な奴はいる。
共通のバンドのファン仲間でも、趣味でやっていた楽器演奏の場でも、飲み仲間や過去の同級生にもやらかす奴らはいたし人間関係は面倒だった。
その世界でのプロや目立つ人の中で首をかしげるような人はどの場にもいた。
自分含めたモブ勢にもそういう奴はいた。
意見が合わないだけでどちらが正解とかないのに、やたら喧嘩したがるやつもいたし無関係な喧嘩に首を突っ込むやつもいた。
ダーツの世界だけ正常だとか異常だとかそんなもんではないのだと思った。
ただ、自分の周りのダーツプレイヤー達はダーツ界隈をより良くしようとする人がそれなりに目立っていると感じ、そこにはすこし関心した。

わたしは今後どのようにダーツを続けていくのか、あるいは飽きてやめるのか、自分でもよくわかっていないが、割と楽しんでいることもあるし、界隈も楽しい場所だったらいいなと思った。