鉄棒の「逆上がり」というものの存在を初めて知ったのは、多分私が幼稚園児の頃だと思う。

仲良しのトモカちゃんと一緒に園庭の鉄棒に並んで、一緒に練習した記憶が、私の「逆上がり」の遡れる限り最初の記憶だ。

トモカちゃんも最初中々逆上がりが出来ず、「難しいね」なんて話しながら楽しく練習していたが、いつのまにかトモカちゃんだけ出来るようになり私だけ出来ないまま卒園してしまった。

私は小学校に上がっても逆上がりができるようにならず、中学になるともう逆上がりなんてする機会も無く、そのまま大人となり今に至る。

逆上がりだけでなく、一輪車やインラインスケートなんかも買ってもらったのに、何度トライしても上手く乗りこなせなかった。

縄跳びの二重跳びは小学校六年生の時に出来た。

私は運動神経があまり良くない。

きっとこのまま一生逆上がりが成功することはなく、一輪車に乗れることもなく、インラインスケートで走れることもなく、お婆さんになって死ぬのだ。

私は「逆上がりが一度も出来たことがない側の人間」なのだ。

ただ、逆上がりが出来たからといってこの先の人生で何か変わるわけでは無いのだ。

無いのだけど、きっと誰もが味わった「初逆上がり」の誇らしい気持ちを味わうことなく死んで行くのだと思うと、少し寂しくもあるのだ。